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いつの日か、世代を超えて人が交流する地域の復活を。

宇陀・ひと・こと・もの 01

[宇陀市榛原高井]千年大志会 代表 稲森範良さん(67歳)

蛍の復活が住民の心を前向きにした。いつの日か、世代を超えて人が交流する地域の復活を。

稲森範良さん

佛隆寺敷地内の水車小屋にて

千年大志会の設立は平成16年。高井農産物販売場(宇陀市榛原高井)ができたとき、「地域で何かできひんやろか?」と考えた有志10人ほどが集まったことがきっかけです。千年大志会という名前は、千年桜や千体仏、千本杉といった、1000を冠した近隣の名所にちなんでいます。「やるからには志を大きく!」という思いも込めて、大志という言葉を加えました。

主な活動は毎年4月の佛隆寺「千年桜の花見会」と、6月の「蛍の夕べ」を運営することです。花見会には千年大志会の設立当初から携わっていて、蛍の夕べはそれから3年後、平成19年から開催しています。今年がちょうど10年目ですね。

僕らが子どもの頃、高井をはじめとしたここ内牧地区は、それはもう蛍がたくさんいた。文字通り“乱舞”で、蛍のあかりで周囲が明るくなるほどでした。「あの景色をよみがえらせたい。次世代に伝えたい」と思ったことが、蛍の夕べを始めたきっかけです。地域の子どもを集めて蛍を鑑賞し、地元の歴史を学んだり自然に親しんだりするイベントとしてスタートしました。

あれから10年。川を手入れしたり幼虫を放流したおかげで、蛍の数は確実に増えました。イベントを楽しみにしてくれる人も増え、遠方から毎年来てくれる人もいます。来ていただいた方に喜んでもらえることは、僕ら地域住民にとっての喜びになっています。そうしてるうちに、みんなが「もっと楽しんでもらうためにはどうしたらいい?」「来年はこうしてみたらどうやろ?」という“次”を見据えた話をするようになってきたんです。

どこの地域もそうやと思いますけど、内牧も人が随分と減ってしまって、独り暮らしのお年寄りばかりになってしまいました。そうなると、「こういう時代だから、もう、どうしようもない」っていうあきらめの気持ちになってしまうんですよね。それが、蛍の夕べを開催することを通して、みんなの意識が前向きになってるんです。このことが、僕にとって何よりの喜びです。僕はあきらめるつもりなんてまったくありませんで。その気持ちを共有できる人が、ゆっくりとですけど増えていることがうれしいですね。

蛍の夕べをきっかけにして内牧と親しんでくれた方が、子育てや定年退職後の暮らしにぴったりな場所としてこの地を選んでくれる。そんな人の流れができることが僕の夢です。蛍を復活させることは第一歩。その先にある、世代を超えて人が交流し、支え合う地域の復活を目指していきたいです。

佛隆寺千年桜

内牧のシンボルの1つ、佛隆寺の千年桜。千年大志会が運営に携わってきた花見会は年々、賑わいを増している。

蛍を鑑賞するだけではなく、養殖や放流、川辺の環境整備など、環境保全にも力を入れている

蛍を鑑賞するだけではなく、養殖や放流、川辺の環境整備など、環境保全にも力を入れている

【取材メモ】

千年大志会が拠点を置く内牧地区は、昭和29年までは宇陀郡内牧村として独立した自治体だった。昭和30年に宇陀郡榛原町に合併し、平成23年に宇陀市に。地区内には伊勢本街道が通り、旅籠など往時の面影を残す家屋が今も点在する。佛隆寺(宇陀市榛原赤埴)は大和茶発祥の地とされ、敷地内にたたずむ千年桜は県の天然記念物。

■蛍の夕べ(2016年)

・日時:6月11日(土)15:00~21:00頃

・会場:髙井生活改善センター、矢谷川周辺(奈良県宇陀市榛原髙井)

 

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